夜尿症(遺尿症)について

2019年9月22日

夜尿症における、あいち熊木クリニックの漢方治療・精神科的治療

あいち熊木クリニックは、心療内科・精神科クリニックで、もともとは思春期の専門です。

しかし、そんな事情とは関係なく、さまざまな要請を受けることがあり、それらに対して何とか応えようと尽力してきました。

その一つが、夜尿症(遺尿症)です。

夜尿症とは、学齢期に達しても(すなわち、6歳頃になっても)、継続的に夜尿をしてしまう状況をいいます。

夜尿とは、睡眠時の無意識的な放尿のことをいいます。
”たまに出てしまう”という寝小便(おねしょ)とは一応区別します。

夜尿症3原則として「起こさず・怒らず・焦らず」が有名ですが、もちろんこれで収まるものであるなら、放置しておけばいいのです。

ただこのような配慮をしても、変わりないまま学齢期に達し、依然このような状況が続いている場合、まずは泌尿器科を受診しましょう。泌尿器の検査で異常が見出だせない場合、または西洋薬治療で功を奏しない場合、あいち熊木クリニックで治療を行うことができます。

私(熊木)は精神科医でかつ漢方医ですので、漢方を中心とした処方を行います。(ときに、三環系抗うつ薬などの精神科薬物処方を選択するときもあります。まあ、ケースバイケースですね)

ちなみに、泌尿器科で治療が行われる場合、夜尿アラーム療法(おねしょアラームを使った一種の行動療法)や西洋薬処方(デスモプレシンなどの抗利尿ホルモン。膀胱収縮抑制作用のあるポラキスなど)が多いようです。

私たちが漢方処方を行う前に必ず確認していることがあります。それを以下に挙げてみます。

1)飲水(特に就寝前)は多くないか。カフェインを含むお茶・コーラなどをよく飲んでいないか。

⇒ これは言うまでもないことです。が、このようなコントロールができていないことが意外に多い。

2)クーラーなどで身体が冷えすぎていないか。

⇒ 夏場には要注意です。
夜尿症には漢方的に考え、いくつかのものにタイプ分けできます。以下は、日頃熊木が診療で念頭に置いているものです。

A)下半身の冷えによるもの

⇒ これは子供でもありますが、お年寄りに見られる夜尿症の場合、かなりの場合これに当たります。
お年寄りでは夜尿になる前に、覚醒することが多くなり、結果眠りが非常に浅くなります。これは、腎虚(五臓のうちの腎の衰弱。水毒を引き起こす。老化現象の一つ)によるものです。

[代表的方剤]

  • 八味地黄丸(腎虚のお年寄り向き。下半身の冷え)
  • 六味丸(膀胱機能の未熟な子供向き。八味地黄丸より効きが穏やか)
  • 苓姜朮甘湯(手足や腰の冷え。八味地黄丸証より口渇がないタイプ)

B)虚弱で、臓器下垂傾向のあるもの

⇒ このような体質の場合、消化器全般の下垂のみならず、膀胱も下垂します。すなわち、”だらしなく漏れ出てしまう”タイプです。
尿道括約筋の締まりが弱いため、昼間でも尿意を我慢できず、おもらししてしまうことがあります。ゆえに、升提(緩んだ筋肉に緊張感を与え、締めて、臓器を持ち上げること)が必要になります。

[代表的方剤]

  • 小建中湯(虚弱体質の子供において頻用。夜泣き・突然の腹痛・下痢など多彩な症状に奏功)
  • 補中益気湯(脾気虚、いわば消化器系虚弱体質において、緩やかな滋養強壮作用がある)

C)実証(体力がある)タイプ

⇒ Bとは逆に体力があるこのタイプは、昼間は激しく動き回り、夜間はぐっすり眠る子供に多く見られます。熟睡して夜尿に気づかないことが特徴です。

[代表的方剤]

  • 葛根湯(代表的な解表剤。項部のこわばり・じんましんなどあるタイプ向き)
  • 麻黄湯(解表剤。葛根湯証よりさらに体力の強いタイプ向き)
  • 白虎加人参湯(清熱剤。口渇が強く、飲水多いタイプ向き)

D)神経過敏で、緊張が強く、動悸もみられるタイプ

⇒ 就寝後すぐに夜尿してしまうことが多いです。
ただし、”頻回夜尿”が特徴的で、小刻みに少量夜尿を繰り返します。昼間も頻尿傾向で、神経質な言動が見られます。

[代表的方剤]

  • 抑肝散(肝気鬱結の代表的方剤。心理的ストレスが強く、癇癪を起こしやすい子供向き)
  • 抑肝散加陳皮半夏(抑肝散証よりさらに虚弱で、動悸が強く見られるタイプ向き)
  • 柴胡桂枝湯(胸脇苦満(胸の脇にものがつまったような感じで,肋骨の下のあたりが重苦しく,抵抗や圧痛がある状態)の代表的方剤の一つ。疝痛(腹部臓器の平滑筋の攣縮(れんしゆく)によって起こる疼痛で,強い痛みが間隔をおいて繰り返し襲ってくるもの)の見られるもので頻用)
  • 桂枝加竜骨牡蛎湯(神経過敏で、動悸・不眠のみならず、陰萎・遺精などがあるタイプ向き)

この他にも、

  • ご両親も夜尿で困られていたことがある場合、遺伝的な要素があるかもしれない。
  • 夜尿症に加え、重症チック症・トゥレット症候群・どもり(吃音症)・抜毛癖(抜毛症・トリコチロマニア)・爪かみ・歯ぎしり・貧乏ゆすりなどの併発がある場合、発達障害の可能性も考慮に入れる必要がある。
  • 夜尿症には、トイレットトレーニングの失敗が尾を引いているケースが散見される。

など、精神科的問題がからむことがあります

以上の記載を読まれて、何か思い当たることがあれば、お気軽に、あいち熊木クリニックにご相談ください。漢方医学的に、また精神医学的にお手伝いいたします。

追記:夜間尿による不眠にお悩みの場合は、夜間尿(過活動膀胱:OAB)を伴う不眠について をご一読ください。

<※参考>

『自宅で暴れまわる我が子』 (「発達障害」<ADHD/アスペルガー症候群など>についての臨床相談)

重症チック症・多発性チック症(および、トゥレット症候群・どもり(吃音症)・抜毛癖(抜毛症・トリコチロマニア)・爪かみ・歯ぎしり・貧乏ゆすり)の薬物療法(漢方薬・精神科薬物)

「歯ぎしり・顎関節症」についてのQ&A・・精神科医からの見立て

熊木による書籍紹介『自閉症スペクトラムの精神病理』内海健(医学書院)


『警察が私を陥れようとする!』 (「パラノイア」についての臨床相談)

「ビルに飛行機をぶつけたの、あれは私の叔母の仕業です」