夜間尿(過活動膀胱:OAB)を伴う不眠について

2019年10月19日

【提言】夜間尿を伴う不眠について

不眠は本当に苦しいものです。

どこかの自治体で「不眠が2週間続いたら、精神科へ」という標語がありましたが、そのような状況になった方がいたなら、本当にそうして欲しいと思います。

まずは眠剤(睡眠導入剤)など精神科の薬に頼らず、自ら工夫して眠れるようにするのが望ましいでしょうが、どうにもならないとき、薬物の処方・服用をためらうべきではありません。
場合によっては眠剤だけではなく、依存性があまりない抗うつ薬・抗精神病薬などをうまく組み合わせて処方することもできます。

「1に睡眠。2に睡眠。3・4がなくて、5に食事」というのは、私がよく患者さんに伝える言葉です。
食事ももちろん大事だが、睡眠はそれをはるかに上回る重要なもの、との意です。

これから本題に入ります。
夜、尿意を催し、トイレにたつことを“夜間尿”(最近「過活動膀胱:OAB」などと呼ばれるものも、これに類するものです)といいます。
もし夜間尿があるがゆえに不眠になっている方がいるなら、まず最初に眠剤を使ってはいけません
夜間尿を改めるのが先決です。

この場合、漢方処方を行います
夜間尿は、漢方的には腎虚からくる症状です。
腎虚とは五臓六腑の腎が弱った状態ということで、水毒をもたらします。
水毒とは、不必要な水が体に取り込まれすぎるか、もしくは体の水はけが悪くなるかして起こります。
文字通り、体にとって水が毒となる状態です。

腎虚からくる水毒の諸症状として、めまい・耳鳴り・下半身の冷え・泌尿器系の衰弱(精力減退・頻尿)・脱毛などが特徴的です。
腎虚とは平たく言うなら、「老化現象」のことです。
これに効く漢方として、六味丸・八味地黄丸・牛車腎気丸などがあります。
夜間尿は腎虚の典型的症状です。

夜間尿による不眠には、これらの方剤をまず用い、夜間尿の改善が見られてから、眠剤などを慎重に用いていくべきです。

もし、夜間尿による不眠で、最初に眠剤を用いたらどうなるか。
頭は眠りに落ちていこうとするのに、膀胱からは「寝てはいけない。まずはトイレに行かなくては」というシグナルがくるわけです。
このような生体からのシグナルに抗うような処方を、私は「アクセルブレーキ(ブレーキを踏みながらアクセルを踏み込んでいくと、エンジンが壊れますね。それと同じ事をしているのです)」と呼んでいます。
このような処方は避けなくてはなりません。

なぜ私が、ここでわざわざこのようなことを書かなくてはならないか。
それは、精神科を転々としている患者さんのなかに、少なからずこのような処方が成されている例を目にするからです。

腎虚に効く西洋薬はありません
ゆえに、普段漢方を使わない精神科医は、上記のようなアイディアを持っていないことが多いのです。
患者さん・精神科医ともども、このような処方に対する認識が広がっていくことを祈念します。
今後、気付き次第、普段の臨床で目にする「アクセルブレーキ」を取り上げていきたいと思います。

追記:あいち熊木クリニックにおける夜尿症治療については、夜尿症(遺尿症)について をご一読ください。

<※参考>

ゆったりリラックスして、じっくり眠るためのアドバイス

SAD(社交不安障害)“上がり”克服のヒント ~“想定観客”のみと対峙すること~


SAD(社交不安障害)“上がり”克服のヒント(2)~“完全な自分”という鎧をほどく~

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