“服み心地”と「官能的評価」の違い(論文「「官能的評価」から考えた精神科治療論 ~いかに抗うつ薬を、服み効かせるか~」より)
私は拙著『精神科医になる』(中公新書)の中で、精神科薬物の「官能的評価」という用語を持ち出し、こう提唱した。
処方あるいは服用した薬物について、患者あるいは精神科医の五感を総動員して浮かび上がらせたもの、(薬物の“色・味わ ...
治療戦略的プラセボ ~精神科薬物療法の目指す未来~
1:はじめに
精神医学および精神科薬物療法は、ながらく混沌のなかにあった。それは患者の示す精神症状がどのような体のメカニズムによるものか、うまく描き出せないためであり、またそれゆえに向精神薬が効くのに、どのような薬理学的背 ...
向精神薬は<時代の病理>を反映する(論文「向精神薬の意味論」より)
先に<時代の病理>と書いたが、それをもう少し丁寧に表現するなら、時代の流れに適応した結果、当初は同時代人に支持・受容されたが、後にその適応の過剰さが仇になって排斥・迫害された自意識が深く絡んだ病理のことである。具体的に例を示した方がい ...
「専門性」をめぐるジレンマ(論文「向精神薬の意味論」より)
誤解を恐れずに言おう。現代の治療において、患者はいかなる不快さも容認しない。医師が患者のためを思うあまり、あえて患者が不快に思うであろう提言・忠告を行おうとしても、患者はそのような暑苦しいパターナルな関わりを、「余計なお世話」と切って ...
服用する根拠・処方する根拠(論文「向精神薬の意味論」より)
まずは精神科患者(あるいは患者予備軍)が、ある向精神薬を服用する根拠について考えてみたい。患者は悩み・苦しみを抱えた時点で直ちに精神科医の前に姿を現すわけではない。患者はまず精神科医に遇う前に、さまざまなことを考えている。今どのような ...
精神科薬物の官能的評価 とは
*熊木徹夫 講演録より転載
1:はじめに本日は、このような貴重な場にお招きいただき、ありがとうございます。
あいち熊木クリニックの熊木徹夫です。
こ ...
服薬して楽に過ごしていくことは<甘え>だ
ここ最近、次のようなことを言う患者さんに複数遭遇しました。
いずれも、患者さんご自身と治療者である私がともに苦労の末、やっと患者さんが楽になれる薬を見いだし得た果てのことです。
「今は薬のおかげでとても楽になり安定 ...
嘔吐恐怖症 について
あいち熊木クリニックの摂食障害外来に、「拒食症(神経性無食欲症)」として紹介されてくる患者さんの中に、一定数、拒食症とは異なる病態をもった方が存在しています。それは ...
ジェネリック医薬品 について
近頃、TVコマーシャルでもジェネリック薬(後発医薬品)の宣伝が多く行なわれており、厚生労働省からも、国民皆保険制維持のため医療費削減を行なう趣旨で、ジェネリック薬の処方を促進しようと ...
「官能的評価」から考えた精神科治療論~いかに抗うつ薬を、服み効かせるか~
精神科薬物療法では、薬物を症状に働かせることを狙うのではなく、患者さんの身体構造を改変し、患者さんがより過ごしやすい状況を恒常化させることを狙う。また、薬物と言葉により、患者さんの身体を耕すことを目指すのでなくてはならない。