元映画狂の回想録・その1

2019年10月19日

こんにちは、熊木です。

たわいもない昔話をひとつ。

名古屋市立大学時代、医学の勉強はそこそこに、
自分の関心領域の本ばかり読んでいました。

そしてある時期(大学4年生の約一年間)、映画にもはまっていました。

大きな映画館では飽きたらず、単館上映をハシゴ、
とっぷり日も暮れ、くらくらしながら帰途についたことが稀ではありません。

しまいには、京都で未公開のロシア映画をやるからと、
一週間泊まりがけで映画鑑賞を行う、
肝心の映画は、全編ロシア語音声で、英語字幕、
ついていくのがやっとの状態でした。

このような”映画狂”になった大本はといえば、
それは他ならぬ水谷雅信先生です。
www.myclinic.ne.jp/mm_clinic/pc/doctor.html
彼の映画話に引き寄せられ、このようになってしまったのです。

(一方、水谷先生を読書狂にしたのは私であるかもしれません。

水谷先生との青春については、またどこかで触れると思います)

ある日、いつものように大学には行かず、
朝早くから映画館に足を向けました。

お目当ては『二十日鼠と人間』、原作はスタインベック、
ジョン・マルコビッチ と ゲイリー・シニーズが主演の映画です。
(監督は、ゲイリー・シニーズ)
goo.gl/Y7HG5V

内容については,興味のある方にご覧いただければ嬉しいです。

この映画はそう大きな前評判が立たず、
それゆえか、観客は何と私を含め3人!

映画館の最後列から眺めると、後ろ姿しか見えませんが、
一人は初老の男性、もう一人は女子大生と思しき女の子です。

私は大変満足した映画では、エンドロール終了まで席を立たず、
その味わいをじっくり噛み締めます。

そのときも、まさにそうでした。

エンドロールを眺めながら、
頭にじわーと心地良い波紋を広がっていくのを感じながら、
全く動けないでいました。

ふと前の方に目をやると、二人の観客は、
小さくひくひくと肩を震わせていました。

私は顔も見えないその二人の観客と
映画を通じて共鳴できたような感覚に囚われ、
そのことがまた言い知れぬ幸福感を引き起こしたのでした。

もう20年以上前の話ですが、今になっても、
何の脈絡もなくこの情景が思い出されるのです。

最近多忙ゆえ、映画館で映画を見る時間が持てませんが、
映画と、その楽しさに引き合わせてくれた水谷先生に、
今も感謝の気持ちは変わりません。

熊木徹夫(あいち熊木クリニック<愛知県日進市(名古屋市名東区隣)。心療内科・精神科・漢方外来>:TEL: 0561-75-5707: https://www.dr-kumaki.net/ )

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