ゆったりリラックスして、じっくり眠るためのアドバイス
イライラ・不安がかなりひどくて落ち着かない、さらに不眠も強ければ、やはり服薬が必要になります。
しかし、できるだけ服薬量を最小量にしてしのいでいく生活上の工夫も、同時に大切なものです。
以下に“ゆったりリラックスして、じっくり眠るためのアドバイス”をさせていただきます。
これをいくつか組み合わせ、ご自分の快適な日常生活のため、お役立てください。
1:「一に睡眠、二に睡眠。三四がなくて、五に食事」
食事はもちろん大切なのですが、それよりはるかに重要なのが、よく眠ることです。
中途で覚醒することなく、7~8時間ぐっすり眠れることが理想です。
眠りが十分であるなら、自己治癒力が高まり、どのような病気も大きく悪化していくことはありません。
2:入眠前の半身浴
熱い湯にドブンとつかるのは、交感神経がたかまって興奮してしまいますので、かえって寝付きを悪くしてしまいます。
できるだけ温めのお湯(38度くらい)にゆったりつかりましょう。
それも半身浴なら、なおいいです。
30分以上の入浴なら、半身浴でも全身が十分に暖まります。
またこのやり方なら、副交感神経がたかまりリラックスでき、寝付きもよくすることができます。
風呂から上がったら、なるべく間を空けず就床しましょう。
3:入眠前のストレッチ
風呂上がりに全身のストレッチをやると、とてもいいです。
とりわけ、肩回りのストレッチ・体操をお薦めします。
4:入眠前に温かいミルク
温かいミルクの効果は、ときとして睡眠薬1錠の効果に匹敵します。
嫌いでなければ、取り入れてみてもよい方法です。
5:入眠前の飲水はほどほどに
入眠前に温かいミルクがいいとはいえ、入眠前の過度の飲水は、尿意をもたらすため、眠りの持続を妨げてしまいます。
眠前薬を飲むための最小限の飲水に留めるのがよいでしょう。
6:寝酒はバツ
入眠前に酒を一杯ひっかけて寝る、なんて習慣がある人は多いかもしれませんが、これはいけません。
酒は一時的に入眠を助けるように見えても、非常に耐性(効かなくなり、どんどん必要量が増えていくこと)が強く、
次第に入眠効果がなくなっていき、一合が二合、三合とどんどん増え、果てしなくなります。
また、寝酒の習慣がある人は、中途覚醒が極めて起きやすくなることも分かっています。
さらには、アルコール依存症になるリスクがあり、
仮にアルコール依存症になるならば、治療はとても困難で、またかなり長期に渡ることになります。
意外に思われるかもしれませんが、寝酒に比べたら、まだ睡眠薬の方が数段安全です。
(もし本当に酒が安全で薬の代わりになるなら、医師がそれを処方するでしょう)
7:ある程度暗くして、音を立てずに眠る
明るいままでないと、あるいは何か(ラジオなど)を聴きながらでないと寝付かれないという方がいますが、
それでは疲れ(特に脳の)が取れません。
目や耳に刺激を与えない“お休みモード”で眠るようにしましょう。
8:身体を締め付けない
パジャマやスウェットパンツなど、身体を締め付けない楽な衣服を身にまとって寝るようにしましょう。
どうしても身体が冷えすぎて眠れない方は、やや緩めの腹巻をしましょう。
それでもダメであれば、靴下を履きましょう。
9:寝返りが打ちやすい枕で眠る
夜間、首が同じ位置に固定されていると、朝方の首コリ・頭痛(筋緊張性頭痛)の原因になります。
低反発枕などがお薦めです。
10:起床時の体調に注目する(「体モニター法」)
朝起きがけに身体がぐったりしているようなら・・前日に行なった何かがいけなかった可能性があります!
「身体にいいかどうかは、翌朝の身体の状態に訊け!」
これを私は「体モニター法」と呼んで、啓蒙しております。
当日の夜の身体は興奮して“嘘をつく”ので、参考になりません。
「体モニター法」を実践し、身体の嫌がることをしなくなれば、
体調の悪化を防げる可能性が増し、ひいては養生となり、長寿にもつながると考えます。
11:朝、日光を浴びる
長時間でなくていいです。一日一度はおてんとさんを拝みましょう。
できれば朝がいいです。睡眠リズムがうまく修正される効果があります。
12:適度な運動をする
軽い運動を持続的にするのが効果的です。
たとえば、1日15分、朝の通勤途中で歩くだけでも随分違います。
心肺や膝関節などに負担をかけるほどの運動(例:マラソン)までは必要ありませんが、
余力があるなら、軽めの有酸素運動を取り入れるとよいでしょう。
また、朝や昼の運動は適度な疲れをもたらし、入眠に寄与しますが、
夕方以降の激しい運動は避けるべきです。興奮して眠れなくなります。
13:15分程度の仮眠をする
ふさわしい睡眠時間は人それぞれといいますが、
うつ病や統合失調症など何らかの病気をして服薬中の方であるなら、
やはり夜間睡眠7~8時間を目指すのが理想です。
もしこれだけの夜間の睡眠時間をキープしているにもかかわらず、なお朝や昼に眠くなる場合はどうすればいいか。
私は15分程度の仮眠をお薦めしております。
あまりに眠いからといって、昼間に布団をかぶり、部屋を暗くして、2時間ほど熟眠してしまうと、
必ず夜間の睡眠が妨げられ、昼夜逆転し、仕事や学業などの社会生活に大きな支障がでてしまいます。
(ここでいう熟眠とは、起き上がるときに身体がぐったりしていて、すみやかに動き出せないくらいの睡眠をいいます)
昼寝は、ソファーにもたれるなり、机にうつぷせになるなり、あえて寝苦しい姿勢を取るのがいいのです。
それでも本当に眠いなら、眠りに落ちることはたやすいです。
そして、そのような寝方で寝るならば、だいたい15~30分で目覚めることができ、
寝覚めも非常にスッキリして、いい感じで活動再開できます。
またこれならば、肝心の夜間の睡眠が妨げられることはありません。
それに15分程度の仮眠ならば、それを取らない人より、取る人の方がより健康に過ごすことができます。
(机にうつぷせになって寝る場合、顔枕がお薦めです。これがあると首を痛めません。
インターネットのアマゾンなどで”顔枕”と検索すれば、適当な商品を購入することができます)
14:<夏限定>クーラーを30度・微風に設定して眠る
ここ数年の猛暑で、夜間眠れず、苦しんでおられる方の話をよく耳にします。
もし、ご自宅の寝室にクーラーを取り付けておられるなら、効果的な対応策があります。
それは一晩通して、クーラーを30度・微風に設定して眠ることです。
クーラー使用法でよくあるのは、初めの1~2時間だけしっかり冷やして、
その冷気の持続している間に寝付いてしまうというものです。
しかし、このやり方では、途中急激に室温が上がるため、寝苦しくて起きることになります。
一晩中室温を安定させることで、朝まで暑さをうまくしのぐことが出来ます。
また“30度・微風”などで、しっかり寝付けるのかという声もあるかもしれません。
しかし、クーラーで湿度を取れば、これで十分大丈夫です。
むしろ、寝入ったときに冷やしすぎると風邪をひいたりしかねませんので、このくらいがいいのです。
一晩中とはいえ、“30度・微風”であれば、省エネであるともいえます。
注意点が二つあります。クーラーの設定を“除湿”にしないこと。
これは意外なのですが、冷えすぎますし、電気代も多くかかります。
また、おなかだけは冷やさないようにタオルケットなど乗せておくこと、
寝相が悪くてそれがうまくいかないのなら、腹巻をしておくとよいでしょう。
熊木徹夫(あいち熊木クリニック<愛知県日進市。心療内科・精神科・漢方外来>:TEL:0561-75-5707: https://www.dr-kumaki.net/ )
*熊木徹夫のYoutubeチャンネル『うんぷてんぷ : 精神科医・熊木徹夫に訊け!』では、記事の要点や、追記にあたる説明を、熊木徹夫自身が解説しています。
ぜひ、チャンネル登録をお願いします。
15分昼寝なら「顔枕」|うんぷてんぷ : 精神科医・熊木徹夫に訊け!
<※参考>
SAD(社交不安障害)“上がり”克服のヒント ~“想定観客”のみと対峙すること~
SAD(社交不安障害)“上がり”克服のヒント(2)~“完全な自分”という鎧をほどく~
「子供の夜泣きで、今夜もまた眠れそうにない・・」と悩める貴女へ ~夜泣き・寝ぐずり・かんむし(かんのむし)・歯ぎしり・寝言・夜驚・夢遊について、漢方処方の提案~
精神科医。
精神保健指定医・精神科専門医・日本精神神経学会指導医・東洋医学会(漢方)専門医
あいち熊木クリニック 院長
心療内科・精神科・漢方外来|愛知県日進市(名古屋市名東区隣)
TEL: 0561-75-5707