ジェイゾロフト(塩酸セルトラリン)の官能的評価(9)

2019年10月16日

(心身軽く)<飲み始めはすごく効果を感じた。
身体も心も軽くなった気がした。
内服により、すぐに病気が治るような気がした。
薬の味はなく、飲みやすい>
(3390 るいるいさん)

(薬圧低下)<気持ちが落ち着く気がする。
不安感が薄れる。
体には大きな負担は感じられない。
当初は気分が悪くなったが、最近はまったく気にならない。
現在75mg服用中だが、飲んでいることを忘れてしまうほど>
(3247 わすれな草さん)

(知らず知らず)<色は白色で味は無味無臭、形が楕円形で他の薬と間違えにくいと思います。
服薬してまだまもない為、劇的に効いているという感じはないですが、じんわりと日に日に効いているのかな?と感じる。
薬のおかげなのか、慢性の頭痛、肩凝りもほとんど無くなっている(気がつけば・・という感じ)。
飲みはじめたすぐは胃がムカムカする日が3日程続き、2回程おなかもこわしたけど、それ以降副作用はないです>
(5108 しみさん)

(副作用少ない)
<・パキシルを飲んでいた時期が有りましたが、比べて吐き気や倦怠感があまりないと思う。
増減した時のはあまり変わらない。
・見た目的には普通の薬といった感じなので、他人の前で飲むときも特に抵抗はない。
味に関しても特に感じない。
・飲んでいる時間が長いので、効いているのかどうかはよく分からない>
(4420 円さん)

(なくして効果自覚)<飲みはじめはとくに自分の中では変化はあまり感じませんでした(少量ずつだったので)。
効果が出てくると言われている4錠(100mg)にしたばかりのころ、妊娠していることがわかったので減らしています。
現在1錠(25mg)ですが、また少し人目がこわくなってきているのがわかったため、効いていたんだなということを実感しています。
白い薬で小さいため大変飲みやすく、味もほとんど感じません>
(5051 ともさん)

(体調良く)<H22年1月少し前から、飲み始めたと思います。
服用し始めて数日は、胃の不快感と体全体が怠く、辛かった記憶です。
けれども、その数日を過ぎたら後は、体が楽になりました。
錠数をいったん増やした時は、すでに体が薬に慣れていたのか、不快な感じはありませんでした。
現在までずっと100mgの服用を続けていますが、随分と体調が良くなりました。
快方へ向かうと、睡眠時間を十分にとっていても、昼間大変な眠気におそわれるのが実感でき、不思議でした。
他の薬のときは体重が増加する副作用がありましたが、それもなく良かったです>
(3362 なでしこさん)

私は、精神科医の中井久夫先生がよくお使いになる「薬圧」という言葉を、実臨床の場でよく用います。
それは何の断りもなく用いたとしても、患者さんが一瞬でその意味を解してくれるからです。
このような言葉の”発明”は、患者さんの心身に向きあう中で、どうすれば患者さんの感覚を適切に汲み取れるか、苦心惨憺の末、成されたものであるように思うのです。
それに対し、治療者=患者間の感覚の橋渡しにつながらない”歪な言葉”は、日頃そのような言葉を発する治療者が本当の意味で患者さんと通うところがないことを示すものです。
それはともかく、上記六人の方々の官能的評価は、ジェイゾロフトの「薬圧」の小ささを示すものです。
そして、このような展開こそ、薬物治療の理想といえます。
なでしこさんは<快方へ向かうと、睡眠時間を十分にとっていても、昼間大変な眠気におそわれるのが実感でき、不思議でした>と話していますが、これはジェイゾロフトだけでなく、あらゆる薬物で起こることです。
すなわち、「ある薬物が服用者にとって必要十分な量である場合、眠気が出現しにくいが、服用者が治癒に向かっていくと、その薬物の必要量が変化し、”余剰分”となった薬物は服用者に眠気をもたらすようになる」のです。
それゆえ私は、これまでずっと等量を維持してきた精神科薬物を減らすタイミングを決めるため、服用者のこの「眠気」を利用しています。
「眠気」のみならず、患者さんの身体からの”囁き”に耳をそばだてていれば、必ず何かが聞こえてくるのです。

(つづく)

熊木徹夫
(あいち熊木クリニック
<愛知県日進市(名古屋市名東区隣)。心療内科・精神科・漢方外来>
:TEL: 0561-75-5707: www.dr-kumaki.net/ )

本文は、
『精神科のくすりを語ろう・その2 ~患者による官能的評価の新たな展開~』熊木徹夫(日本評論社) )
から抜粋した記事です。

×