ジェイゾロフト(塩酸セルトラリン)の官能的評価(1)

2019年10月18日

ジェイゾロフトは、SSRI(Selective Serotonin Reuptake Inhibitors:選択的セロトニン再取り込み阻害薬)の一種です。
日本では、ルボックス(デプロメール)・パキシルに続き、3番めに発売されたSSRIですが、セロトニン再取り込み阻害作用はSSRIの中で最も強いとされています。
SSRIは抗うつ薬に位置づけられますが、これからお話するように、ジェイゾロフトは実に多彩な薬効を持っています。
では、その特徴を炙りだしてゆきましょう。

(じんわりゆっくり意欲上昇)<味わいは特にありません。
以前服用していた「ルボックス」に比べて、じんわりゆっくり意欲が高まる感じです。
私は、胃の不快感が副作用として出ました>
(4505 はなさん)

(ルボックスよりすっきり)<当初ルボックスを服用していましたが効果が分からず、ジェイゾロフトに変更して頂きました。変更直後から(ルボックスとの併用時期)から朝起きたとき、何となく今までと違うスッキリ感のようなものを感じることができ、現在にいたっています。
完全に切り替わって1年以上経ちますが、今は25mgで特に変化を感じないので、効いているのかどうか分からない状態となっています。
薬になれてしまった感は否めません>
(3711 らんぶさん)

(自然に動ける)<まず、一日25mgを一週間服用しました。
服用している実感はありませんでした。
50mgを一週間服用した時も、変わりませんでした。
そして、75mgを一週間服用しました。
六日目に少し気持ちが楽になり、なんとなくしんどい(だるい)感じや、何もしたくないような気持ちもなくなってきました。多少の眠気はありましたが、次第になくなりました。
現在、一日100mgを服用しています。
自然に動けるようになりました。
やらなければいけないと思っているのに動くことができず、眠いわけでもないのにほとんど布団の中で過ごしていた状態から抜け出すことができました>
(sakura さん)

(苦手に取り組める)<苦手な事に取り組もうと思ったり、気持ちが落ち着いた気がします>
(4564 エメさん)
ここで指摘されていることは、急激な気力上昇など無理な賦活化がなされることはなく、ゆるやかな意欲上昇があり、薬圧(後述)を感じることなく、いつのまにか良くなっているということでしょう。
これは抗うつ薬としては、ある意味理想的なことです。
また、エメさんがいうような感じで、苦手に取り組めるというならば、これは身体感覚が麻痺して無理押ししてしまったというのとは違い、かなり安全です。
私は「精神科臨床においては、患者さんに快を与えるのではなく、楽を与えることを旨とすべし」と自らに言い聞かせ、治療に当たっています。
過剰にスピーディに賦活されることは、患者さんに良からぬ快を与えることになります。
快は瞬間的なものですから、まるで波のように引いていきます。
このような快をひとたび経験すると「夢よ、今一度」と快の再来を望むようになり、これがいわば薬物依存を引き起こす元となっていきます。
多少物足りないような、でもいつの間にか効いているような薬物の方が、安全であるといえます。

(つづく)

熊木徹夫
(あいち熊木クリニック
<愛知県日進市(名古屋市名東区隣)。心療内科・精神科・漢方外来>
:TEL: 0561-75-5707: www.dr-kumaki.net/ )

本文は、
『精神科のくすりを語ろう・その2 ~患者による官能的評価の新たな展開~』熊木徹夫(日本評論社) )
から抜粋した記事です。

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