2012年頭の辞:東日本大震災で「精神科情報支援」を体験して

2019年10月19日

<あいち熊木クリニックに通院中のみなさまへ>
(※お年賀頂戴しました方、ありがとうございます。本状でもって挨拶に代えさせていただきます)

明けまして、おめでとうございます。

昨年2011年は、まさに激動の年となりました。
東日本で起きた大震災・津波・原発被害という大きなカタストロフィは東海地区にいた私たちにとってもまったく人ごとではなく、人生において絶対に安定的なものは何もないという当たり前の事実に直面化させられることになりました。
実際にご本人が、あるいはご家族がこの災厄に巻き込まれたケースに、私自身何度も遭遇することとなりました。
お亡くなりになった方のご冥福を、いまだ苦しまれている方の今後の幸せを、改めてお祈りしたいと思います。

2011.3.11.の深夜、未曾有の災厄の到来にうち震えながら、私は「精神科情報支援」というささやかなボランティアを立ち上げることを決意しました。
通院がままならず服薬継続ができなくなってしまった精神科患者さんが出現してくることを想定し、そのような方々がもっとも必要とするであろう、一時的な手当て・アドバイス・有用情報提供を行おうという試みです。
とはいえ、あいち熊木クリニックに通っていただいている650人の患者さんの健康管理こそが、私にとり最も重要な責務であり、それをおざなりにすることはできません。
そのため、愛知と東北に対しての”意識と体力の配分”が、大震災以降の私の大きな課題になっていました。
幸い、私の呼びかけに対し、全国の多くの精神科医からの賛同・協力を得、実際社会およびインターネット上においても”善意の輪”が広がっていくさまを目の当たりにし、感銘を受ける日々でした。

私自身、多くの方々に大きな幸せをいちどきにもたらせるような仕事をしておりません。
精神科臨床は、日々患者さんの微細な変調・苦しみに耳を傾け、知恵を絞り、何らかの治療を提案し、その様子を窺いながら患者さんとともに一喜一憂する、その毎日の繰り返しです。
このささやかな営為に粘り強くお付き合いいただき、本当にありがとうございます。

今年も、みなさんにとり少しでも安楽な生活がもたらされるように寄与していく所存です。
どうぞよろしくお願い致します。

2012.1.1.
熊木徹夫(あいち熊木クリニック<愛知県日進市。心療内科・精神科・漢方外来>:TEL:0561-75-5707: https://www.dr-kumaki.net/ )

<※参考>

東日本大震災・精神科情報支援体験記 ~震災ボランティアの新しいかたち~

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