おくすり手帳は、あなたの命綱
最近は、医薬分業が主流になってきており、薬物処方箋が出される医療機関で直接、薬物処方が行われることは少なくなってきています。
それは、あいち熊木クリニックにおいてもしかりです。
あいち熊木クリニックは、院内に薬を持たない(院外処方)医療機関です。
患者さんは、最寄りの薬局に薬を取りに行きます。
一方薬局では、処方箋に沿って患者さんに確実に薬物を渡すことが求められています。
その過程で、処方箋そのものにミスはないかチェックし、服用者である患者さんが適切に服用を遂行できるようサポートをしています。
また薬局では、「おくすり手帳(お薬手帳)」が配られています。基本、無料です。
これは、薬物と一緒に渡されるその内容詳細を記したシールを、貼り付けていくためのものです。
中には、こんなものがあること自体知らない患者さんもいます。
しかしこの「おくすり手帳」には、患者さんが思いもよらない“効能”があるのです。
以下に、それらを列記しましょう。
- 西洋薬のような覚えにくいカタカナ名、漢方薬のように覚えにくく見慣れない漢字名、これらの“覚え書き”の機能を発揮します。特に、ある医師からある医師に薬物情報の伝達が成されなければならない時、これほど分かりやすいものはありません。
- シールが発行されるたびに、それを「おくすり手帳」に貼り付ける作業自体、一回につき10秒もかかりません。
しかし、この行為をただ粛々と続けて行くだけで、この「おくすり手帳」はあなた専用の立派な“カルテ”になってゆくのです。時系列で処方の変遷が見られることの意味の大きさは、測りしれません。
治療を引き継いだ医師は、患者さんの病態や前医師の見立てを知る上で、どんな紹介状よりもこの「おくすり手帳」を重宝するでしょう。
さらに、この「おくすり手帳」にあなただけのオリジナル記録(“ある薬物Aが20mgに増えたとき、口渇が出現したが、その一方で、ふんわり浮かび上がってくすぐったくなるような心地よさを感じられた”など。すなわち「官能的評価」ですね)を、赤字で書き込んでいくと、最強ですね。 - そして、意外に誰も口にすることはありませんが、とても重要なこと。
それは、大災害において、あなたのかかりつけ病院や主治医が被災して、あなたの治療データの一切が取り出せなくなったときこそ、あなたの“相棒”である「おくすり手帳」が俄然力を発揮します。
例えそこがかかりつけでなくても、「おくすり手帳」を持って近くの病院に行けば、すぐさまあなたの処方薬を引き継いで処方してくれるでしょう。
あいち熊木クリニックでも、ありとあらゆる大災害に備え、手を打ってきていますが、それでも不測の事態が絶対起こらぬとは言い切れません。いざというとき、患者さん自身もサバイバルするため、このようなことは普段から真剣に考えておきたいものです。(「災害下にあって、常用薬を断たれて、死ぬほど苦しかった」とは、先の東日本大震災で1週間服薬できなかった、ある被災精神科患者さんの弁です)
このように「おくすり手帳」は、あなたの命綱。
今一度、その重要性を見返し、くれぐれも侮ることなかれ。
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<※参考>
治療における「先駆者優先の原則」