先発医薬品は「マイカー」、ジェネリック薬は「全く癖のわからぬ他人の車」
処方箋の成分名表示(一般名表示)を開始して、2週間がたつ。
これによって、患者さんは薬局でジェネリック薬処方を求めやすくなり、実際少しずつジェネリック薬処方も増えてきている。
患者さんがジェネリック薬処方を選択するか否かということには、患者さんの意志が介在しなければならなくなるので、小さいながらも「インフォームドコンセント」が必要になってくる。
そのため、これまでに患者さんに向けてあれこれ説明してきた。
そのなかで、意外に多くの方が次のようにおっしゃる。
「先生のオススメは何ですか」
「先生がやりやすい薬でやってください」
「先生を信頼していますので、先生の言われるとおりにします」
このような発言は、治療者という主体が治療に深く介在していることを理解し、承認していただけている証しであるので、とてもありがたく思う。
これまでの“先発品かジェネリック薬か”の議論では、その物質の効能の話と薬価の高低の話にのみ収斂されていくことが多く、患者さんの体および治療者の技の介在について配慮されることが少ないことに私自身、違和感を感じていた。
このような信頼を寄せてくれる患者さんに対し、私は治療者の立場として、その“ウデの振るいやすさ”を次のように説明する。
治療者である私にとって、先発品(たとえば、ルボックス)は「マイカー」のようなもの。
これまでに何千人かに処方し、試行錯誤していくうちに、自在に乗りこなせるようになった。
それに対し、ジェネリック薬は「全く癖のわからぬ他人の車」という感じ。
ルボックスのジェネリック薬だけでも何十種類かあり、それぞれ微妙に違う。
それをコントロールし、乗りこなすのはなかなか難しく、いつまでたっても若干の違和感が残る。
もちろん薬物療法のプロを自認するからには、どんな車でも何とか乗りこなそうとはしてみる。
ただ治療者である私が、その薬物の乗りこなしに難渋するということは、ひいては実際に処方を受けている患者さん自身にも苦労が及ぶ可能性が高くなるということだ。
これを聞くと、先発品で行きたいという患者さんが多くなり、患者さんの処方選択にバイアスがかかることは否めないが、治療者の正直な感想を治療に反映させることも、患者さんと治療者との相互関係としての治療という営為においては、重要なことだと考えている。
熊木徹夫(あいち熊木クリニック<愛知県日進市。心療内科・精神科・漢方外来>:TEL:0561-75-5707: https://www.dr-kumaki.net/ )
<※参考>
精神科薬物治療を成功に導くために、精神科医・患者双方が知っておくと良いだろうこと